我々会社員にとって、毎月決まった日になると振り込まれる給料。
当たり前に月に1回振り込まれるものと思っているけどどういう仕組みだろうか。
また、「給料制」や「年俸制」など、言葉は聞いたことあるけど、 実際何が違うのかよくわからないと感じましたので、 まとめてみました。
1. 給料制:毎月決まったお給料
給料制は、毎月決まった金額のお給料が支払われる仕組みです。
基本給に加えて、残業代や通勤手当などの諸手当が支給されます。
法律では、賃金は少なくとも月に1回以上支払わなければならないとされています。
(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、 その全額を支払わなければならない。ただし、 法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるもの による場合においては、通貨以外のもので支払い、また、 法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、 労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を 代表する者との書面による協定がある場合においては、 賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、 一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、 臨時に支払われる賃金、 賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金( 第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、 この限りでない。
- メリット:毎月安定した収入が見込めるので、 生活設計が立てやすい。 残業した分はきちんと残業代として支給される。
- デメリット:残業が少ない月は収入が減ってしまう可能性がある。 昇給のペースは比較的緩やか。
イメージとしては、基本給 + 残業代 + 諸手当 = 月々の給料 となります。
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、 第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、 又は休日に労働させた場合においては、 その時間又はその日の労働については、 通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を 支払わなければならない。ただし、 当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場 合においては、その超えた時間の労働については、 通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金 を支払わなければならない。
② 前項の政令は、労働者の福祉、 時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
③ 使用者が、当該事業場に、 労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、 労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を 代表する者との書面による協定により、 第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して 、当該割増賃金の支払に代えて、 通常の労働時間の賃金が支払われる休暇( 第三十九条の規定による有給休暇を除く。) を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合にお いて、当該労働者が当該休暇を取得したときは、 当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時 間の労働については、 同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
④ 使用者が、午後十時から午前五時まで( 厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、 その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで) の間において労働させた場合においては、 その時間の労働については、 通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
参考(厚労省ウェブサイト)
賃金については、労働基準法第24条において、(1)通貨で、( 2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一 定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています( 賃金支払の五原則)。
賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。|厚生労働省
2. 年俸制:1年間の給料を分割して毎月支給
年俸制は、1年間の給料をあらかじめ決めて、それを12分割(もしくは16分割など会社によって異なる)して毎月支給する仕組みです。
法律上、「年俸制」という言葉の定義はないようですが、 一般的には年収を定めて支給する形態を指し、 年俸には基本給に残業代や諸手当が含まれている場合が多いです。
一般社員は給料制、 役職者は年俸制というように分かれている会社も多いのではないかと思います。
- メリット:年収が明確なので、 長期的なキャリアプランを立てやすい。 成果に応じて年俸額が見直される場合もある。
- デメリット:残業しても残業代は基本的に出ない( 管理監督者などの場合を除く)。年俸額が変わらない限り、 毎月の収入は一定。
イメージとしては、年俸 ÷ 12ヶ月(または16ヶ月など)= 月々の給料となります。
※
年俸制においても、労働基準法の規定は適用されますので、 給与制と同じように、月に1回支給される形式になっています。
また、例えば、労働時間や休日に関する規定、 最低賃金の規定などは遵守されなければなりません。
したがって、「年俸制」というのは、 どれだけ残業しても残業代は出ないという鬼のような制度ではないと捉えられると考えます。労働基準法第37条の趣旨に照らして、 年俸制を導入しさえすれば、 時間外勤務手当を支払わなくて済むというわけでなく、 時間外勤務手当は、 当然に支払う必要があると判断した裁判例もありました。
ただし、残業代が支払われるためには、 基本給部分と時間外勤務手当部分とが明確に区分できるようにして おく必要があるようです。
参考にしたウェブサイト
労働基準法では、年俸制について特別な定めはないため、 年俸制においても、基本的には、 月給制や時給制などと同じように法令が適用されます。
例えば、労働基準法では、賃金を毎月1回以上、 一定の期日に支払う必要がありますので(労働基準法第24条第2 項)、例えば、年俸額を1年に1回、 まとめて支払うといったことはできず、年俸額を12等分するなど して、毎月の支払日を設けて定期的に支払う必要があります。
「年俸制」とは?制度のメリットと留意点(残業代(割増賃金)、賞与、更改など)を解説 | 京都うえにし社会保険労務士事務所
残業代込みの年俸制は認められるのか? | 就業規則の竹内社労士事務所
3. 結局どっちがいいのか
「給料制」「年俸制」、どちらが良いかは、 それぞれの働き方やライフスタイルによって向き不向きがあると思います。
一概には言えませんが、以下のようなイメージでしょうか。
会社によってはあらかじめ決まっているところも多いかと思います が、 選べる場合や転職を考えるにあたっての判断材料の一つとして、 自分のキャリアプランや価値観と照らし合わせて、 どちらが自分に合っているのか考えてみても良いかと思います。
おまけ:最近よく聞く「裁量労働制」ってなんだろう?
これは給料制・年俸制とは別の概念で、 労働時間ではなく成果によって評価される働き方です。
裁量労働制は、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2 種類があります。
労働基準法第38条の4に規定がありました。
長いので割愛しますが、全ての業種で選べる働き方ではなく、「 業務遂行の手段や方法、 時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務」 である必要があるようです。
参考にしたウェブサイト
裁量労働制とは?職種や残業代についてわかりやすく解説 | NECソリューションイノベータ
仕事の進め方を自分で管理する
一定の専門業務に従事する労働者に対して、 労使協定を結ぶことで導入できます。 あらかじめ定められた時間働いたものとみなされ、 みなし労働時間分の賃金が支払われます。
- メリット:自分の裁量で仕事のスケジュールを管理できるため、 柔軟な働き方が可能。
- デメリット:労働時間が長くなりがちで、 ワークライフバランスを保つのが難しい場合も。 健康管理に気を付ける必要がある。
働き方が多様化している世の中、会社員= 会社の方針に服従する以外の道はないというような認識一択であったところ、 自分はどう働きたいかを考えていろんな選択肢の中から選べるよう になりつつあるように感じます。